・Hextbook没ネタ。元ネタを知らないと分かりにくいのに元ネタを知っていると出おち。
		  ・原作はとてもいい話です。いとうひろしさん。東京書籍小5など。
        苦手な方はお戻り下さい。
 	       
 	       
 	      
 	      
           
          私が今よりずっと若く、アルフレッドさんも今よりずっと若々しい筋肉を誇っていたころ、私とアルフレッドさんは毎日のように、お散歩に行きました。
            私たちのお散歩は近隣をのんびりと歩くだけのものでしたが、私が引きこもっている間に激変していた世界はまるで遠くの海や山をゆくような未知にあふれていました。
            遠い憧れであったあのひとにも、本の中だけの存在だったそのひとにも。
            ときには海をいくクジラにさえ、古くからの友達のようにアルフレッドさんは声をかけていました。
            そんなアルフレッドさんと手をつないでそろそろと歩いていると、私の周りは、魔法にでもかかったみたいにどんどん広がっていくのでした。
            でも新しい発見や楽しい出会いが増えれば増えるだけ、困ったことやこわいことにも出会うようになりました。
            お向かいのあのひとはわけもなく私をぶつし、また別のお向かいのそのひとは私に会うたびに顔をしかめます。経済は牙をむき出すし、国内外できしみは続きます。
            爆弾は空からも落ちるようになりましたし、おそろしいばい菌が兵器転用されるようにもなりました。いくら勉強したって英語の発音はできないまま、なんだかこのまま大きくなれそうにないと、思えるときもありました。
          だけどそのたびに、アルフレッドさんが助けてくれました。
          アルフレッドさんは、私の手をにぎり、おまじないのようにつぶやくのでした。
            「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
          「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
            それは、無理してみんなと仲良くしなくてもいいんだってことでした。
            「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
            それは、わざと侵略してくるような国も、めったに…めったにしか、ないってことでした。
            「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
            それは、たいていの病気や怪我は、いつか治るもんだってことでした。
          「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
            私とアルフレッドさんは、何度その言葉を繰り返したことでしょう。
            あのひとともそのひとともいつのまにか仲直りできました。
            何度か転んでけがをし、一度は体中がぼろぼろになりました。でもそのたびにすっかりよくなりました。
            むずかしい経済ももいつか分かるようになると思います。もっともっとたくさんの人や国や動物に出会えると思います。
          
          私は随分元気になりました。アルフレッドさんはずいぶんか細くなりました。
            だから今度は私の番です。
            アルフレッドさんの手を握り、何度でも何度でも繰り返します。
            「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
            だいじょうぶですよ、アルフレッドさん。