視線の先


・菊・湾・王三角形、菊視点。
・後味よくないです。
苦手な方はお戻り下さい。

 

 

 


寒いネ、と彼女は笑って、ついと腕を伸ばしてきた。
思わず体を引いた、そのせいで隙が出来た脇にするりとそれを絡ませて、掴んだ腕に頬を寄せてくる。

「ちょ、っと、あの」
接触に慣れない身、思わずどもる。そんな私を掬うように見上げて、彼女はふふ、と笑った。
そしてそのまま視線を流す。

ああ、また。

彼女はいつも、無意識に彼の視線を探す。彼女が彼女であることを世界でただ一人許さない、彼。
好き・嫌いの問題ではないのだ。骨がらみ、そんな言葉がぴったりな、彼女と彼。


私と寄り添う彼女、を見る彼、を見る彼女。循環する視線はいつも無意識で、だけどそれだけ切実で。


―――もし彼がいなかったら、こうして私の腕をとりますか。

聞こうとして、口を閉ざす。代わりに彼女に微笑みを送る。

 

 

あなたがわたしにわらいかけるりゆうを愛だとおもえないわたしをゆるしてください、

そしてわたしがあなたにえがおをむけるりゆうのいくらかがかれにあることも。



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